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2024/04/30 00:03 |
ファンタジー好きですか?

俗に「世界三大ファンタジー」という場合、大体は
・トールキン『指輪物語』
・ルイス『ナルニア国物語』
・ル=グゥィン『ゲド戦記』
の3作品が挙げられているように思います。

私は上記のいずれも読みましたが、それぞれの印象を端的に表現するなら

・『指輪物語』=創世神話
・『ナルニア国物語』=子供のためのキリスト教解説本
・『ゲド戦記』=人生哲学書

というところでしょうか。独断と偏見に満ちている点はご了承下さい・・・。

この中で一番新しい作品は『ゲド戦記』で、新しいとは言っても完結していた筈なのですが、数年前に驚きの最新作が発表されました。(さすがに、これ以上は出ないと思いますが)。著者も唯一の女性かつアメリカ人(しかもまだ現役)ということで、イギリス人男性の手による残りの二作とは、やや毛色が異なっているかもしれません。

「アースシー」という架空の世界を舞台に、ハイタカという一人の偉大な魔法使いの波乱に満ちた人生が、幼年期・青年期・壮年期に分けて語られています。(といっても、ハイタカが完全な主人公といえるのは、本編全五巻のうちの、最初の一冊だけですが)。
この作品の特徴は、ハイタカを超人的なヒーローとして描くのではなく、悩みや苦しみといったハイタカの内面に焦点を当て、彼を一人の人間として描き出している点にあります。そういう点では、3作のうち最も小説的であり、最も人間的なテーマを持っているといえると思います。

『ナルニア国物語』は、最も幼い年齢層向けに書かれたものです。
この作品が映画化された時のCMに、一頭のライオンが登場していたのをご記憶ではないでしょうか。このアスランというライオンこそが、キリストの仮託であり、キリストさながらに殺され、その後その死から復活を果たします。
3作品の中では、唯一の「異世界への迷い込み」系ですね(笑)
衣装タンスが、異世界への入り口という設定は、この『ナルニア』が元祖です。
前述のように、キリスト教思想が非常に色濃く出ていますので、人によっては完結部(最終巻の第7巻のラストですね)に、ちょっと受け入れがたいところがあるかもしれません・・・・実は私がそうでした_| ̄|○

ただ、細部まで徹底的に描写するスタイルをとる『指輪物語』とは対照的に、行間を読ませるタイプの作品なので、想像を膨らませながら読めるという楽しみにあふれています。


さて、上記の3作品のうち、私のお気に入りは、やはりファンタジーの祖とも言われる『指輪物語』です。

エルフやドワーフといった異種族や、貴重な金属の「ミスリル」、そして力を秘めた「指輪」と、それをめぐる争い・・・。RPGゲームまで含めた、現代のファンタジーの原型の全てが、この作品に集約されているといっても過言ではありません。
(ちなみに、この『指輪物語』の世界観を受け継いで創作されたファンタジー群を、特に「ハイ・ファンタジー」と呼ぶこともあります)

固有の物語を持たなかったイギリスでは、まだ世に出て60年にも満たないこの作品が、古事記やギリシア・ローマ神話のような創世神話としての役割を担っているほどです。
『指輪物語』の主人公ともいえる小人族の「ホビット」が、作者トールキンの作り出した存在であるという事を知らない人が(つまりホビットは古の伝承の中にもともと存在しているものだと思っている人が)イギリス人の中にさえ大勢いる、という事実が、この作品を象徴していると思われます。

(なお、エルフやドワーフなどはトールキンの創作ではありませんが、現在のような「エルフ=尖った耳と、優れた知力・体力を持つ美しい容姿の不死の種族」、「ドワーフ=小柄だが頑強な体躯を持ち、地底生活を好み、鍛冶などの優れた技術を持つ種族」といったイメージは、『指輪物語』によって定着したものです)

しかしトールキンの素晴しさは、実は『指輪物語』を完成した事だけではありません。
というか、『指輪物語』は、トールキンの残した業績の一部に過ぎないのです

トールキンは「祖国イギリスのために」完全な神話体系を作り出す事を夢見て、実際にそれをほぼ完成させました。
トールキンの創造した世界は実に膨大かつ緻密なもので、順を追って述べていくと、それこそとてつもない量になってしまうので割愛しますが(汗)、数万年にも及ぶ「想像上の時代」の歴史が、現代へと続く実際の歴史と完全にリンクする形で作り上げられました。

また、トールキンの創作は、歴史だけではなく、暦や地理、そして言語にまで及びました。
映画中では、リヴ・タイラーなどが演じていたエルフのセリフに、一部英語の字幕がつけられていましたが、その部分がトールキンの創作した「エルフ語」によるセリフでした。

『指輪物語』は、トールキンの創作した一連の歴史の流れの中では、最も新しい時代に当たり、『指輪物語』の終焉は同時に、現代へと連なる人間の時代の幕開にもなっています

『指輪物語』は、私が読んだときには、16~7年前のことですから、まだ全6冊の旧版しかありませんでした。
今売られている新版が全10冊である事からも、旧版の活字がどれほど小さく、また1ページにどれほどの字が詰めこまれていたかが想像できると思います・・・。
視力自慢の私でさえ、「米粒よりちっさい活字ってどうよ・・・_| ̄|○」と、こぼさずにはいられませんでした。
私が読んだ本の中で、最も活字の小さかったものが、『指輪物語』旧版であり、この記録は今後も破られる事はないと思います。

が、その困難をおしてなお、一気に読ませてしまう展開は「面白い」の一言に尽きます。
世界観が確立されているからこそ、想像の世界に揺るぎないリアリティーが与えられるという、ファンタジーの大原則が完璧に体現されている作品です。

ここ数年は、ハリー・ポッターの影響などもあり、空前のファンタジーブームです。
もちろん私も、ハリポタやエラゴンなど、最新のファンタジーをたくさん読んでいます。
ハリポタやエラゴンのほうが、確かに起伏に富んだドラマティックな物語であるといえるでしょう。間違いなく面白いですし。
しかし、ファンタジー草創期の「古典的名作」は、やはり「世界の完成度」が違います
ファンタジーだから「何でもアリ」という、軽薄なところなどもちろんありません。
(日本のファンタジーにありがちですが、『魔法で何でもできる』とか言われると、正直その時点で萎えますよね・・・・)
ファンタジーを敬遠しがちな方は多いと思いますが、特に『指輪物語』は是非一度、お手にとってみて下さい。

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2007/03/29 04:02 | Comments(1) | TrackBack() |

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コメント

こんばんは!今回はファンタジーな内容ですね(^o^)
自分もRPG好きですからファンタジックな物語は大好きです!
FF7もやってるところですし・・・
上で紹介されてる指輪物語、一度読んでみたいですね。
これはあのロード・オブ・ザ・イカリングですねくコ:彡
かなりちいすけさんにお勧めされた覚えがありますね(^o^)
また今読んでるものが終わったら考えてみます~
あ、今読んでるのはサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』です。
是非読んでください(笑)
posted by tomokichiURLat 2007/03/30 00:57 [ コメントを修正する ]
Re:ファンタジー
こんばんは!
イカリングかどうかはともかく(笑)、『指輪物語』は、是非読んでみてください。
実は、最初の導入部がちょっとしんどいのですが((((゜Д゜;))))、そこさえ乗り切れば、後はラストまで一直線です!

『フェルマー~』は、本の存在だけは知ってます(笑)
ホンの何年か前に、証明されたんですよね?
確か証明した方は、7年だか8年だかを、ひたすらその証明に費やしたとか・・・!?
証明できてよかったですよね。でも、今までにそうやって数学者としてのキャリアを潰しちゃった人って、山のようにいるんだろうなぁ・・・

ちなみに私の読まない本は
ハウツー本・実用書に加え、「数式のある本」です(笑)
2007/03/30 21:10

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