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2024/04/26 20:30 |
久しぶりに大量読了
昨日(日が変わったので一昨日ですが・・・)は体調がすぐれず、ほぼ一日安静にしてました。
が、寝てると暇なので、結局昨日今日で5冊の本を読んでしまいました。

1.『ゆらぎの森のシエラ』 菅浩江著 (創元SF文庫)

2.『これは王国のかぎ』 荻原規子著 (中公文庫)

3.『すばらしき愚民社会』 小谷野敦著 (新潮文庫)

4.『東京検死官』 山崎光夫著 (講談社文庫)

5.『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎著 (創元推理文庫)

はい、相変わらずジャンルバラバラです(笑)
1・2・5が小説、3がエッセイ、4がドキュメンタリーですね。

1は先日もご紹介した、菅浩江さんの著作です。これはほぼ20年前に刊行された作品の再販です。バイオSFのようなファンタジーのような、ジャンルの境界を飛び出した内容になっているのが、毎回斬新な作風の菅さんらしい作品です。

まあ、やはり古臭さや、設定が読めてしまう展開など、『博物館惑星』に比べれば見劣りはするように思いますが、20年前の作品である事を踏まえると、仕方のないことなのかもしれません。この20年の間に、似たような作品がたくさん刊行されているでしょうから、それらを読みなれてしまうと、やはり昔のものに目新しさを感じられなくなってしまいますしね・・・。


2は、もともと児童文学者として有名な荻原規子さんの作品です。アラビアンナイトを下敷きにしたファンタジーです。章立ても、管弦楽曲であるリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」にちなんだものになっており、執筆中オーマンディー指揮によるフィラデルフィア・フィルのCDをずっと聴いていたそうです。

ちなみに、アラビアンナイト(千夜一夜物語)とは、王妃に不倫された王が徹底的な女性嫌いになり、その怒りから、毎晩王宮に迎え入れた女性の首を落とす、という誓いを立てました(そんな誓いたてるなよ・・・って感じですが)。国中の女性が戦々恐々とする中、大臣の娘が王の下へ向かう事を志願し、毎晩毎晩面白おかしい物語を語ります。続きが聞きたい王は、彼女を殺す事が出来ず、もう一晩、もう一晩、と延ばすうちにとうとう千日が経過し、王の怒りも解けたという外枠を持っています。この、娘が語った話の一つ一つが、例えば「アラジンと魔法のランプ」であったり、「アリババと40人の盗賊」だったりするわけです。そして、この大臣の娘の名前こそが「シェエラザード」なのです。

内容は・・・コミカルでテンポもよく面白いのですが、対象年齢はやはり、主人公と同世代くらい、つまり中学生辺りを想定してると思います(⊃д⊂)
ま、でもハリポタだってゲド戦記だって、児童文学ですしね・・・。一応自己弁護。

3は、私の好きな著述家の一人、小谷野先生のエッセイです。
この方の一番のベストセラーは『もてない男』(ちくま新書)だと思うのですが、この『すばらしき~』も、相変わらず過激で面白かったです。
この小谷野さんのすばらしい点は、

1.とにかくカバーしている範囲が広い。
時代は万葉から現代まで、またジャンルも文学はもちろん、社会学や歴史、政治・哲学思想に芸能など多岐にわたります。この人の読書量が想像できないほどです。しかも芸能も、歌舞伎や落語といった古典から、最近のマンガや映画まで、本当に幅広いです。

2.真摯な議論の姿勢がある。
反論にもきちんと応え、また他者への疑問もキチンと当人へぶつける。著作の中で反論を行う際にも、その出典や論拠を常に明確にしている(学術論文でもないのに、ここまで出典を明確にしている人は、ほとんどいないと思います)、といった誠実であろうという明確な意思が見えて、読んでいても説得力が感じられます。

ただやっぱり、議論を吹っかけるのがお好きなようで、というか議論こそが学者として重要だ、議論をしないなんて只のバカだ、というポリシーを持っておられるようなので、必然的に方々の学者・評論家と衝突してらっしゃいます・・・。まあ、一般人の私は、そういうのを読むのが面白いわけですが(笑)

(ちなみに、小谷野さんの著作で特に槍玉に上げられているのは、サブカルチャー論で有名な宮台真司さんと、フェミニズム論の上野千鶴子さんです(;゜ロ゜))

もし仮に、入試問題で、この小谷野さんの文章を出題する大学があったなら、ある意味それだけでその大学には入る価値があるかもしれません((((゜Д゜;))))・・・多分小谷野さんの文章が使われることはほぼないと思いますけど(汗)

特にこの本の第10章「禁煙ファシズムを斬る」、は喫煙者必読です(笑)
ただ、こんなに(喫煙者の側からすると)胸の空くような快論を述べてくれているのに、小谷野さんはいつもこの調子なので、結果いつものごとくマスコミからは黙殺・・・・・・・・・・・・・。過激・極論過ぎるのも困り者です(笑)


4は、昭和20年代から40年代にかけての約20年間を、「検死官」として過ごした、一警察官の記録です。普通は、検死官というのは嫌われる職なので、2年間検死官を勤めた後は署長になれる、というご褒美がつくほどなのだそうですが、この本の主役である芹沢さんは、まさに「検死の神」として、検死官をほぼ全うされた方です。

芹沢さんは、検死は手袋をせず「素手」(現代は手袋が義務付けられてます)、3000体もの変死体を検死した経験から、他殺か自殺かが即座に分かる、などなど、言ってみれば「伝説の検死官」でして、歴史的な事件の検死も手がけておられる、非常に稀有な警察官でした。(2005年に他界されてます)。ちなみに医師でも、その他医療関係者でもなく、あくまで「一警察官」です。

芹沢さんは、安保反対運動の最中に事故死した、東大生の樺(かんば)美智子さんや、力道山などの検死にも立ち会っておられます。

この本のもう一つの魅力は、「病死」と診断され、事件性はないものとして処理された男性の死について、芹沢さんが興味深い推理を行っている点です。
もちろん、芹沢さんはこの件に関して、検死は行っていませんし(というか、下記の事情により、この男性の検死自体が行われていません。)、そもそもこの件は、芹沢さんの検死眼を試す(!?)ために、筆者が持ち込んだ事例です。

この男性の死は、病死に間違いないだろうとの判断で、かかりつけの医師が、その場で死亡診断書を書いたのですが、その医師自身も実のところ引っ掛かりを感じていました。
扇風機の強風を泥酔したまま一晩中浴び続け、体温が奪われ、結果として急性心不全で亡くなったという経緯だったのですが、妻や同居していた妻の妹、また現場の様子にもいくつかの疑問点がありました。(普通は、そんな状態で眠り込んでいても、寒くなって目を覚ますはずということもありますしね。)

ただ、死亡した男性は、心臓が弱かったので、眠り込んで扇風機の風を直接浴び続けていれば、死に至る事も十分に考えられたため、結果的に医師は深くは疑わず、死亡診断書を発行します。
死亡診断書があれば、死体は解剖に付されることはありません。死因がハッキリしているという事で、解剖の必要性がなくなるからです。

ということで、この男性の死は病死として処理されたわけですが、芹沢さんはズバリ「他殺でしょう」、と言い切りました。
その論理の鮮やかな事!推理小説のような世界が、現実にもあるんだなぁと思わずにはいられませんでした。まさに安楽椅子探偵です

(しかし、という事は完全犯罪だよな・・・・Σ(゜д゜|||)こうして、闇に埋もれていく犯罪って、私たちが想像している以上に多いのかもしれません((((゜Д゜;)))))


ねたばらしは出来る限りしないというのが、このブログにおけるマイルールですので(笑)、ここまで書いてなんですが、気になる方は是非ご一読下さい。オススメです。(十分ねたばらししてるじゃん!と思われる部分もあるかもしれませんが、ねたばらしの程度も自己ルールです、申し訳ない_(._.)_)

最後の5。最近ベストセラー連発の伊坂幸太郎さんの4作目の長編です。伊坂さんは東北大の法学部出身でだそうで。東北大法学部にまったく縁がないわけではないので、(といっても無きに等しい縁ですが)、ひょっとしたら一回くらいは会ったことがあるかも・・・という私の一方的な思い込みもあって(笑)、最近お気に入りの作家さんの一人です。

この方は、それぞれに謎が散りばめられた複数のエピソードを、見事に収斂させていくというスタイルが得意ですね。このバラバラのエピソードがどうやって絡み合っていくんだろう、とかこっちのエピソードで出てきたこの人、もう一つのエピソードでは誰に当たるんだろう、とか考える楽しみもあって、それが当たっていれば「やったね」と思うし、外れていても「なるほどねー」とちゃんと納得できるので、本当によく練られている、密度の濃い作品を書かれていると思います。

本作は帯の惹句「神様を閉じ込めに行かないか?」が、見事に作品全体を表わしていて、ラストの締め方も(まあ、この惹句を知っている以上、予想通りなんですが)「これしかないよな!」という巧さで、気持ちよく読了しました。

誰が読んでも面白いし、共感できるという点で「最大公約数的」な小説なのかもしれませんが、伊坂幸太郎さんは、ベタとか陳腐といったところがなく、常に「伊坂ワールド」全開なので、これからの新作も楽しみです。

ただ私は、今のところ伊坂作品では、『重力ピエロ』(新潮文庫)がベストだと思っています(笑)



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2007/04/06 02:37 | Comments(1) | TrackBack() |

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コメント

paraporocelloです。

ま、2日間でこれだけの本を読むというのもすごいですが、それをこのブログに書いてしまうというのもすごいですね。この量のブログを読むのには、相当の勇気と努力が必要です。ちょっと息抜きに・・というわけにはいかなくなってきました。
あんたはスゴイ!!!
とだけ書かせていただきます。
いやホンマ、すごいわ。
posted by paraporocelloat 2007/04/09 09:40 [ コメントを修正する ]
Re:あんたはスゴイ!!!
paraporocello様
コメントありがとうございます~!

毎回のような大長編・・・・誠に申し訳ありません(⊃д⊂)
生徒には「簡潔に」と指導しているくせに、本人は書きたい放題です(汗)

徐々にミニマム化を図りたいと思わなくもないので(笑)、日々努力する所存です。
ですが、それまでしばらくは、「長文を読み終えたぜ」という満足感を得る目的で、引き続きお越し頂ければ幸いです(笑)←懲りてなくてすみません(゜▽゜)

これからもよろしくですー♪
2007/04/10 23:55

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